23号台風豊岡浸水深

23号台風豊岡浸水深

平成16年23号台風豊岡浸水深と円山川治水対策提案


まるごとまちごとハザードマップポイントを訪ねて

令和元年10月に襲来した台風19号は日本の東側の広範囲に大きな被害をもたらしました。改めて犠牲になられた形の冥福をお祈りします。 しかし、豊岡にとって人ごとではありません。平成16年の台風23号で豊岡近辺は大洪水になりました。けれど次第に記憶が遠のきつつあります。そこで今回、市内の「まるごとまちごとハザードマップ」のポイントを訪ねて市内の洪水の様子を振り返ってみました。

 市内と周辺合わせて18カ所のポイントを巡りました。ポイントをA〜Dの4つのグループに分けて表にしました。

グループA・・・戸牧川より西あるいは北側の地点

グループB・・・戸牧川より東側、円山川まで

グループC・・・円山川より東側の六方川流域

グループD・・・円山川より東側、KTR宮津線より北側

(地図は昭和7年測量地形図、水色の線は戸牧川、オレンジ色の部分は自然堤防、小さい数字は下表の地点番号、A〜Dは上のグループ)

この台風で、戸牧川はJR山陰線より西側では越水していないと思われます。豊岡市民会館横を流れる円山川廃川は水位が上昇して戸牧川は逆流に近い状態になり、豊岡小学校下の暗渠の手前で戸牧川から越水して北に向かって水が流れているようです。グループAの地点を流れる主たる河川は前川ですが、流量は少なく、AとBの地点で1mの水位の差が生じています。グループCは円山川の破堤の影響を受けています。このグループの範囲では広範で海抜4.5mまで浸水しています。グループDはKTRの北側でここを流れる川は無く、178号線横の川が下宮付近で溢れてKTRの北側に流れてきたかも知れません。

そもそも円山川の西側で水面の高低差がなぜ起きるか。国土地理院の地形図を見ると分かります。JR三坂踏切付近で海抜8mほど、そこから神武山までは海抜10m以上、豊田町から小田井神社横まで国道312号線に沿って円山川の自然堤防(地図オレンジ色の部分)(海抜4〜6mでほとんどのところは4.5m以上)があり、戸牧川がただ1つ低い場所となっています。ですから、円山川の西側は堤防で2つに分けられていると言ってもよいでしょう。ただし、円山川本川の左岸が大きく決壊した場合は氾濫水が自然堤防を越えて左岸全体が同じ水位になることがあると考えられます。そうなると、Aグループでは台風23号の時より2m水位が上がり、浸水深さ3m越えの家屋も多く出てきて極めて深刻な事態が起こるかも知れません。過去には伊勢湾台風で奈佐川の堤防が決壊してAグループの地域はかなりの水位まで浸水した実績!があります。ただ、その時代はAグループはKTR宮津線より市内側しか開発されていなかった。その市内側でもボートで救助した記録があると聞いています。市街地周辺の旧農村部では石垣を積んだ上に住宅の敷地面があるお宅がよく見られます。毎年のように円山川が氾濫した時代を知っている人は洪水に対して厳重な備えをしてきたわけです。

豊岡市の住民の多くは水害と言えば台風23号を基準にしているように思います。Aグループの地域に住む場合は、台風23号を基準に考えたのではリスクの過小評価になると考えられます。円山川左岸が決壊すれば浸水深が3mを越える可能性が高いことが理由です。もちろん、Bグループの地点でも左岸決壊の場合は23号+1m以上の浸水を覚悟する必要があります。

「まるごとまちごとハザードマップ」の豊岡市内18箇所の表です。地点標高は国土地理院地形図から読み取りました。地点2,13は地盤の傾斜があり誤差が大きいです。表の一番上の番号なしの地点を追加しました。

番号グループ地点名最大浸水深(m)地点標高(m)浸水面海抜高さ(m)
AJR奈佐川鉄橋南側東豊精工前交差点1.01.92.9
1A426号線正法寺交差点0.92.13.0
2A178号線西浅黒交差点付近1.6(1.5)3.1
3A178号線宮島交差点付近0.52.32.8
4Aロータリー0.22.52.7
5A若松南交差点付近0.52.42.9
6A幸町国交省前0.72.02.7
7A加広町西花園会館横(0.6)2.32.9
8A〜B中央町歩道橋下0.53.13.6
9B立野町公衆トイレ0.83.13.9
10B312号市民会館南(0.2)3.94.1
11B312号市営駐車場管理室前0.23.94.1
16B桜町 豊岡測候所1.42.94.3
12B豊岡消防署0.73.34.0
13B国交省元町出張所前1.2(2.6)3.8
14C312号線庄境交差点0.63.94.5
17C梶原全但バス車庫付近3.12.15.2
15Dコウノトリの郷駅前交差点1.53.65.1

上表の地点で7、10の2カ所は標識がないので最大浸水深を括弧で表示しています。

次に各ポイントの写真を見て下さい。

地図の北側 JR奈佐川鉄橋南側、竹野からJR線を左に見て市内に入る東豊精工前交差点です。赤い線まで浸水しています。浸水深1m。海抜1.9m。交差点を右に曲がると奈佐川堤防。JR線をくぐって県道豊岡港線への連絡道路になります。交差点を左に曲がると豊岡市内へ行けます。

地点1 426号バイパス正法寺の大きい交差点です。正法寺大橋側から西を見ています。青い標識棒の赤い横線まで浸水しました。浸水深0.9m

国道178号線西浅黒交差点の東側、道路脇の支柱の青い横線まで浸水、深さ1.6m。正面にJR線

国道178号線宮島交差点、西を向いています。支柱の青い横線まで浸水。深さ0.5m

ロータリ。寿通り、豊岡駅を向いています。左の支柱青い横線まで浸水。深さ0.2m

若松南交差点アイティ側からコープ方向を見ています。右下青い線、深さ0.5m

幸町国土交通省の壁面に貼ってあります。青い線が浸水線深さ0.7m

大開通歩道橋の支柱に貼ってあります。深さ0.5m

ここからBグループで地点の標高は高くなりますが浸水しています。立野町公衆トイレ、左側廃川と国道312号線。後に市民会館

312号線沿い市営駐車場横。南を向いています。すぐ前方、但馬信用金庫本店駐車場。左下にプレートがあります。浸水深0.2m。国道西側(写真の右手)は浸水していません。

桜町の豊岡測候所です。浸水深さ1.4m、地面の標高2.9mとあります。

豊岡消防署の正面の柱にプレートがあります。浸水深0.7mとあります。消防車は大丈夫みたいです。消防署の床面は道路から少し高いので、道路は1mぐらい浸水でしょうか。

国土交通省元町出張所前。国道312号線の横です。後側城崎方面、右側廃川と大きな水門があります。浸水深1.2mですが斜面になっており道路の浸水深は1mぐらいか

グループC、梶原全但バス車庫付近、ここは海抜2.1m、浸水深さ3.1mと旧豊岡市では最も浸水が深刻な地域です。地盤を1m上げて家を建てても、玄関ドアの上端まで浸水する勘定になります。ここから約600mの円山川右岸堤防が破堤しているため被害が深刻になりました。現在破堤地点は堤防の上端と同じか少し高めの150m四方の台地となっており、水害時の安全地帯になりました。

グループC、国道312号線庄境交差点の市内側、標識柱の下側にプレートがあります。浸水深0.6m。ここは円山川右岸堤防破堤の洪水が流れてきています。標高が3.9mあり、右上の住宅は1m以上浸水に対する余裕があります。

グループDのKTRコウノトリの郷駅前交差点。電柱にプレートが付けてあります。ここも破堤の影響は受けており、浸水深1.5mですが正面の住宅は車庫以外の浸水はないでしょう。洪水に対する厳重な備えをしている住宅は意外に多いようです。



洪水対策の提案

さて、ハザードマップを見ると豊岡盆地は広範囲にわたり5m以上浸水の可能性有りとなっています。円山川は河口近く十数キロで山に阻まれて幅が狭く、かつ標高差が小さいため全国的に見て最も治水困難な川とされています。堤防の嵩上げも地盤沈下するため困難を伴います。従来の中上流に降った雨をすべて集め直線的に下流に流し、下流部は堤防嵩上げで対応するということでは洪水を防ぐことは難しい。 そこで、途中で水を貯めて時間稼ぎをするということが次の手になります。すでに、豊岡市日高町中ノ郷から上ノ郷にかけて遊水池の整備が始まっています。そこだけでは不十分だと思います。地図を見ると、豊岡盆地は水田が広く広がっています。洪水になれば水田は浸水します。私が言いたいのは、この「浸水」をコントロールするということです。堤防が切れたり、溢水で町もろとも浸水するのではなく、水田を低い堤防で分けて、本流が危険水位になったら、水田部分に水を引き入れて本流の水位を下げる。水田を堤防で囲ってあれば、自然に浸水する場合より、遙かに多くの水を貯めることが出来る。例えば、下の地形図で黒い線で堤防を作ります。半分は川の堤防と共用です。更に,道路は嵩上げして堤防として使えます。青斜線部に水を貯めます。面積1.5km2で深さ3mまで貯めるとして450万m3。ここに円山川最大流量の2割である840m3/秒で注げば約1.5時間持ちます。河川の堤防はピークの3時間をいかに耐えるかで破堤するかが決まります。他にも何カ所か設置すればかなり強力な治水施設になると思いますが。



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