車はなぜ飛んだのか

車はなぜ飛んだのか(東名高速事故)

 高速道路の安全性の盲点

 事故原因をスピードの出し過ぎと片付けていないか。道路構造が原因である。縁石が無ければ車は飛ばない。高速道のこのような危険箇所は全国無数にある。

高速道は高速で走る道路。時速80kmだと20m以上飛び上がる運動エネルギーがある!高速走行では条件によっては5mくらい簡単に飛び上がる!



H29年6月に東名高速道路で乗用車が反対車線に飛んでバスの天井付近に衝突するという痛ましい事故があった。  事故原因の推定で、中央分離帯付近の問題とする説明が少なくない。

 

  ○分離帯付近の斜面を車が駆け上がってその勢いでガードレールを越えた。

   →斜面に車が当たったり、通った跡が残ってない。

  ○ガードレールに当たってその勢いで飛び出した。


   →ガードレールに車が衝突した跡が残ってない。

事実として

  ●事故現場付近には車が衝突したり,乗り上げたと思われる物体は発見されていない。

  ●映像ビデオの飛んでいる車にはほとんど傷が見えない。


 とてもミステリアスな事故でしたが何が起こったのか推察してみましょう。


 【前提条件と事故の概要】

 乗用車はマツダデミオ(全長4.06m、全幅1.69m、全高1.50m、車重1.03t、トレッド1.49m、タイヤ185/65R15程度) バスの全高は3.5m、路面の高低差(バス側が+0.5m)、乗用車の速度は時速100km+α(αは小さい)程度。左ガードレールに当たった後横滑りしながら中央分離帯方向へ進み、ガードレールを越えるときは前方に飛んでいるように見え、乗用車の天井付近からバスの天井付近に衝突。衝突するまでは乗用車はあまり破損していない。追い越し車線の右端に高さ10cmのコンクリート縁石があり、そこから勾配6度の雑草の生えた斜面(幅3m少々)。


 【考察】

 乗用車の重心の高さ0.6mとすると車が飛び上がるときの上向きの初速は秒速8m程度。斜面は勾配6度。乗用車の速度は制限速度を大きく超えていないと言われているのでせいぜい秒速30m。

 まず、「乗用車が斜面を上がっていってガードレールに当たり飛び越えた」と言う説を検証する。乗用車の右方向の速度を秒速10mとすれば、斜面を鉛直方向へ登る速度は秒速1mである。(これではたった5cmしか飛び上がれないので全く説明にならない。)  

    参考h=v^2/2g(vは速度(m/s)、gは重力加速度9.8(m/s2)、hは飛んだ高さ

 残るは縁石しかない。乗用車の走行した道路の写真を見ると追い越し車線の右端に縁石があり、新聞の説明では縁石の高さ10cm。縁石でジャンプしたとすれば説明がつく。


 【車が飛んだメカニズムとして考えられること】

 走行中の乗用車は左のガードレールに衝突したのち縁石の所まで横滑りし、まず右前輪が縁石の触れる。横滑りしているため車は車体の右側が下がり右側のサスペンションはストロークを使い切ってバネがきかない状態である。約0.01秒で縁石に乗り上げる。縁石の高さが10cmなので右前輪付近は  10cm÷0.01=10m/secくらいの上向きの速度になる。直後に右後輪も縁石に乗り上げ車体の右側が秒速10m近い速度で飛び始める。このときボディは左向き(反時計回り)に回転始める。その約0.1秒後左前輪が縁石に触れる。このとき車体の右側は1mくらい浮き上がり、車体は45度近く傾いている。車体は反時計回りに回転しているため、左車体は沈み込み、左サスペンションはストロークを使い切っている。そのため左前輪が縁石に乗り上げる瞬間、左前輪付近は秒速10mで上向きに動く。車体全体の鉛直上方速度は秒速10mよりは大分小さいため、車は時計回りの回転になる。直後に左後輪が縁石に乗り上げ車体は更に強い力を受ける。このとき左後車輪付近は秒速10m程度で上向きに動き車体はこのとき完全に地面から離れる。車全体はそれより小さい速度で上向きに動いているので、車体は時計回りの回転と前のめりになる回転が合成された回転をする。ガードレールを越える頃は概ね元の体勢になっている。つまりバスから見ると真っ直ぐ飛び込んできているように見える。そのあと、乗用車は時計回りに回転しながら、前向きにも回転し、横倒しになって天井から衝突した。


【今後について】

 縁石は必要ないのでは。(工事仕上げの体裁上必要?)

 道路面に縁石など出っ張ったものがあると、車が当たったとき重心から離れた位置に横から強い力が加わるため、車はロールし易くなります。高速だと簡単に横転します。あるいはガードレールを越えて対向車線や道路外に飛び出したり、橋上だと転落することもあるでしょう。ガードレールに衝突するときは、車は重心に近い位置に広範囲に衝撃を受けるので回転せずに単に跳ね返されるだけです。

多くの高速道路で道路の端や中央分離帯付近に10cm〜20cmの高さのコンクリートの「段」が付けてあります。一般道ではないのでこの段上を人が歩くことはありません。万一歩く場合でも、車の速度が速いので段は歩く人の安全性を確保しません。段は危険な構造物ですから撤去すべきです。段に、車が当たると車は横転したり道路外に飛び出す可能性があります。段が無ければ車は壁かガードレールに跳ね返されるだけです。


高速道路で何よりも重要なことは

  路面に凹凸や落下物、突起物、段が無いこと。

  側面に突起物、出っ張りが無いこと。

    (特にガードレールの切れ目、分岐付近にある橋脚、ガードレールのないトンネルの入り口は超危険)



   当然のことでしょう!でもこうなっていない箇所が多数あり、日々利用者は危険にさらされている



これらは、絶対条件でしょう。道路管理者の方は問題箇所を速やかに取り除くようにしていただきたい!



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