富士山登山道観光バス事故とフェード現象

令和4年10月13日に富士山須走の5合目への道路通称あざみラインで観光バスが横転して乗客の1人が亡くなられました。痛ましい事故です。原因はフェード現象が起きてブレーキが効かなくなった可能性があるとされています。

フェード現象は、ブレーキで起きるのですが、そもそも自動車のブレーキは自動車の運動エネルギーを摩擦熱の熱エネルギーに変換する装置であるため、激しい使用により、ブレーキの摩擦面は高温になってブレーキの性能が著しく落ちる可能性があります。ただ、どの記事にも具体的にどんな条件のときフェード現象が起こるかの記述はありません。その点を少し探ってみましょう。

 今回の事故では5合目から事故現場までの高低差は620m(国土地理院web地形図から)走行距離5.5kmですから勾配113/1000のものすごい急勾配(1000m進むと113m下る)でしかも長い坂です。

このレベルの坂は全国的に見ても少ないと思います。

例えば、神戸市の六甲山トンネル出口から鷹羽交差点まで高低差373m、距離4.2kmで勾配89/1000の坂

伊吹山ドライブウェイ全区間高低差1069m距離15.9km勾配67/1000

日光いろは坂高低差331m距離4.9km勾配67/1000

少しマイナーですが、天橋立成相寺登山道 高低差286m距離2.5km勾配114/1000

奇しくも富士山の道路と天橋立成相寺登山道はほぼ同じ傾斜です。

天橋立の登山道は道が狭くドライブにはお勧めではありません。免許取って3年ぐらいの時行ったことがありますが結構怖かったです。登るときは5速マニュアル車ならギアは1速か2速です。サードでは登れません。寺の所まで来たらフロントのあたりが焦げ臭くなったのでボンネットを開けて冷やしました。下りはセカンドで慎重に運転しました。当然エンジンブレーキが効いて、フットブレーキはカーブの手前で少し踏むという感じです。

さて、フェード現象の話ですが、昔、カー雑誌を見たとき、ブレーキの評価の記事で時速100kmから停止まで6回連続行っても大丈夫だから優秀なブレーキだというのがありました。そのくらい負荷をかけると車によってブレーキの効きに差が生じるということです。時速100kmは40mの高さから落下したとき地上での速度になります。ですから、240mの落差の道をエンジンブレーキを使わないで下るとブレーキの効きが悪くなることはある。

まあ、高度差200mをフットブレーキだけで下るとフェード現象は起こりうると思って用心したほうが良いのでしょう。

事故の記事にあるように、フェード現象が起きるときは徐々にブレーキの効きが悪くなるのではなく、気が付いたらブレーキが効かなくなっているということです。これは、フェード現象が起きると運転手はパニックになりやすいことを示唆します。

一旦フェード現象が起きると極めて大変です。特に大型車に多いマニュアル車だと低いギアに入らなくなります。セカンドでもブレーキが効かないと急坂ではどんどん速度が上がります。一般的にはローギアに入れてサイドブレーキで車を止めるのですが、速度がある程度出ていると、ガソリン車だとエンジンを5000回転ぐらい回さないとローギアには入りません。ディーゼルだとエンジン壊れるかもです。低いギアに入らないとき危機回避方法は車体を山側の斜面にこすって減速することです。尚、オートマ車は2レンジだと急坂でのエンジンブレーキの効きが弱いように思います。おそらくLレンジを使うことになるでしょう。

普段から下り坂は意識してエンジンブレーキか回生ブレーキを使って下さい。



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